「くすりが出来るまで」のプチ講義 竹丸香織さん |
お薬は風邪薬からサプリメントと、食べ物や飲み物と同じように、何気なく人の身体に入るものです。しかし、私たちが普段服用するお薬を、誰が作って、誰が届けて、誰が安全を保障しているか、あまり考えることは少ないかもしれません。
「何気なく服用しているそのお薬にも、誰かが想いがこもっていることを忘れないでほしい。」そう話す、近畿大学薬学部に通う竹丸香織さんに、今回は薬学の視点から医療福祉に関してお話していただきました。普段は薬学の研究にとどまらずに、FTSN関西というフェアトレード団体でも活躍されています。
みなさん、今日のごはん、何をたべましたか。
学生参加者は京産、阪大、同志社、京大などから... |
香織さんはまず一番初めに伝えたい事、を真っ直ぐ、みんなに問いかけました。
「みなさん、今日のごはん、何をたべましたか。」
「私は今日食べたおにぎりが、誰が作ったのか、誰がそれを届けたか知りません。」
「もちろん知っている人ってすごく少ないと思います。自分の身体の明日、明後日と作ってくれるもの。身体に入ってくるものだって誰が作ったものなのか、どんな想いを持って作られたのか、あまり考えずに普段食べたり、消化してしまっていると思うんです。」
今身につけている服だって同じです。そう香織さんは伝えます。
「周りにある一つ一つは誰かの想いや誰かの頑張りとか結果で出来ているものなんですね。一つ一つの商品の背景を見たときに誰かの想いがつまっているのだということを感じたて食べたり身につけたりすると、なんだか毎日、ありがたみが感じられるんじゃないかなと私は思います。」
「探す」「調べる」「商品化する」の3ステップ
ひとつの薬ができるまで約10年以上もの長い開発期間がかかります。薬によっては20年から30年もかかるものまであるそうです。
薬が出来るまでは主に3行程あるそうです。
今回、香織さんには主に2つ目の「調べる」の行程を中心にお話いただきました。探し当てた物質を人に投与出来る状態まで持って行ってからのお話となります。
薬が出来るまでは主に3行程あるそうです。
- 薬になる物質を 「探す」
- その物質が本当に効くのかを「調べる」
- 薬を申請して「商品化する」
今回、香織さんには主に2つ目の「調べる」の行程を中心にお話いただきました。探し当てた物質を人に投与出来る状態まで持って行ってからのお話となります。
まず一番最初は「非臨床試験」といわれる行程です。薬が本当に効くのかどうかという有効性や安全性を確かめの生物学的実験。この実験の際にはラットを使った実験が中心だそうです。
香織さんは「ひとつの薬が出来るまで多くの命が犠牲になっている事も合わせて考えてほしい」とも話します。
次は、「臨床試験」です。ヒトに投与する段階に移ります。同じく、ヒトでも効くのか、安全なのかを確認します。
この試験は一般的に「治験」と言われており、3つのステップで行われていきます。
第一相試験
20代から30代の若い健康な成人ボランティアに対して投与します。メンバーの中にも何人かやった事がある大学生がいました。しかし、一方で、本来健康な男性に異物(薬)を投与する事は本来危険を伴うもので、注意する必要もあるそうです。
実際には、薬が身体にどのように吸収されていくのかを観察していく行程になります。薬の量を少しずつ増やしていき、どの量まで人体が耐えられ、どのような反応を見せるのかを見ていきます。
第二相試験
次は、健康的なヒトに対してではなく、実際の患者さんに対して投与をする段階となります。少数の患者さんに、少量から始めます。これに選ばれる患者さんは非常に少ないそうです。安全性や適切な容量を詳しく見る事が目的だそうです。
香織さんも何度かこの「第二相試験」に関わった事があるそうですが、とても印象に残っている事が他の行程と比べて多くあると言います。
思い出すかのように実体験を語ります。
「患者さんにとっての一日はとっても大切。その時間を、自分と同じ病気の患者さんの役に立つのならと言いながら受けてくれる。」「効くかどうか、一か八かかもしれないのに、受け入れてくれる。そんな人たちがいる。」「このように、受け入れてくれる人たちがいるから治験が進んで行くんです。」途中で病状が悪化してしまう患者さんがいたり、これ以上投与出来なくなってしまう事がなくなってしまうことがあるそうです。とても、辛い行程になるそうですが、この行程がなければ、次に進めないため、非常に印象を持ったそうです。
第三相試験
この段階に来ると「第二相試験」の段階よりもより多くの患者さんに投与出来るようになります。既に承認されている薬と比較をして、どこが優れて入れ、どこに問題があるのかを調べる事もあるそうです。
この行程を踏み、申請し、商品化へとなります。
とても長い行程をかけて、ひとつの薬が出来上がっているんですね。
今回は「調べる」の行程を中心に記事を書きましたが、他の「探す」「商品化する」の行程においても、初めて知る話が沢山ありました。
私が薬学を学んだ6年間で感じたこと。
最後に、香織さん自身が今まで6年間学んできたことを話してもらいました。
「私は薬がヒトの命を救うと思っていました。しかし、それは間違いだった。くすりが人を救うのではない。患者さんは一人一人自分自身が治っていくんですね。」「自分の免疫や自分の体力、自分の気力をもって、人は治っていく。」
病院での実体験から香織さんは、言葉を選ぶように話します。
「実際にもう駄目かもしれないと思った患者さんが助かったり。このぐらいの薬を投与したら助かるかなと思った患者さんがどんどん悪くなってしまったりというのを見てきました。」
「でも、本当に感謝しなくてはいけないのは自分自身の身体なんじゃないのかなって。病気の時も戦ってくれて、自分を元気にしてくれてありがとうねと接していく事が、本当は一番大切なんじゃないのかな。」
僕らの医療を世代を超えて共に考える
今回は同志社大学の職員の方も参加 |
少しでも興味を持っていただいた方、是非次回からでも企画MTGにご参加ください。いつも大人、学生関係なく新しい方が参加してくれています。参加希望の方、コメントお待ちしています♪
ミニ講義参加スタッフからの感想:)
今日はお薬ができるまでのお話をかおりさんから聞いて色んな気づきがありました。明日の私の体を今の私が作っていること、何かあったときは誰かの思いがあってこそを忘れずにいこうと思いました。 #yorukaigi#医療ch
— Marina.O (@Marina_DEARS) July 17, 2012
薬ができるまでに沢山の命が犠牲になっていることに改めて気が付いた。 #yorukaigi #医療ch
— Kensuke Kaneda (@kensuke_kaneda) July 17, 2012
#yorukaigi #医療ch薬は(身体を治す)手助けになる。…それって、ほんと?手助けになる部分もあるけれど、逆に蝕んでいる部分もあるんじゃないのかな。表と裏。
— misa.h(@miffy_0222) July 17, 2012